びびりのびーちゃん、蝶になる。
数日前にカラマツやナラ系の葉がものすごい勢いで落ちてきて、周囲の道路は車が走るたびに落ち葉が舞い上がっています。
雑木林もすっかり骨格が見えてすかすかになりました。
でも暖かい日が続いているのでまだ寒々しくは感じない穏やかな日々です。
夏のブログでも書いたけれど、庭先のディルの葉にキアゲハの幼虫が何匹もついたのでそのたびに観察をしていたけれど、気がつくとみんないなくなっていて、鳥に喰われてしまったのかとがっかりしていました。
そして今年は羽化を見れずにおしまいか、とキアゲハの幼虫観察日記も寂しく終わったつもりでいました。
ところが終わっていなかったんです。
9月に入ったある日の休日、外に置いておいたパセリの鉢に1匹だけキアゲハの幼虫が付いているのを発見!
うわ~、これはもう部屋の中で観察するしかない!と大きめの花瓶の中に保護。
ネットにはセリ科やみかん系の葉を好むと書いてあるけれど、なぜかパセリをむしゃむしゃ。
あっという間に鉢に育っていたパセリを丸坊主にしてしまいました。
近辺に餌となるような葉がもうなくて慌ててスーパーまで車を飛ばすとパセリと高いけれどディルを買ってきて花瓶に補充。
最初はオレンジ色の角を出していたけれど、しばらくするとパセリの茎を登りだし。
葉っぱを手で掴んで食べている姿がなんだかとても愛嬌があって可愛くて、夜になると帰ってきた相方さんも嬉しそうに観察していました。
花瓶が少し振動するだけでびくっと動きを止めて息をひそめるので、いつの間にかびびりのびーちゃんと呼ぶようになって我が家のアイドル的存在に。
葉っぱを一杯食べてうんちを一杯してみるみる大きくなっていくびーちゃん。
毎日の話題に必ずびーちゃん。
ところがある日、仕事から帰ってくるとびーちゃんがいない。
「!!!???」
キッチンのテーブルの上に置いておいた花瓶の中がからっぽになっていた。
実は花瓶の蓋を期限切れのクレジットカードにしていたんです。
どうやらカードが軽すぎて蓋を持ち上げて出て行ってしまったらしい。
めちゃくちゃ焦りました笑。
だってあのサイズの緑の幼虫が部屋のどこかにいるってことなので。
後で知ったことだけれど幼虫は餌を食べている時はその場所を動かないけれど、いざ蛹になる時が来ると移動することが多いのだそう。
ということはこの夏観察していた庭の幼虫たちもどこか良い場所を探して移動していただけだったのかも・・・。
なるほどと感心するよりも一刻も早く踏んづけてしまう前にびーちゃんを見つけなくては!
探しに探しました。
テーブルの裏側からキッチンの籠の中からはたまた扉の空いていたお風呂場までビーちゃんの名前を呼びながらぜ~んぶ。
でも見つからない・・・。
ああ、あんな小さな体でどこまで行ってしまったの。
そのうちどこかで干からびた姿を見つけることになるのかしら、と諦めていた数日後。
びーちゃん見つけました。
リビングの壁の足元に。
最後のうんちらしきものを残して蛹になっていました。
最初ここも見たはずなのに一体どこに隠れていたのか。
でもこれで一安心。
少しの間掃除機をかける時だけ吸い込んでしまわないように気をつけておこう。
蛹になってから羽化するまでは1週間から10日くらいだそうなので、その時が来たら少し気をつけて観察していよう。
そう思っていたのに。
・・・全然羽化しない。
1週間経っても2週間経ってもうんともすんとも言わない。
調べてみるとどうやら時期によってはそのまま越冬することもあるらしく。
え~、この状態で来春まで???
掃除機で吸っちゃいそうだし、カーテンでばさっとやって落っことしてしまいそうで気が気じゃない。
昆虫に詳しい知り合いに瓶とかに移したらダメかしらって相談してみたらできればそのままでと言われ。
ああ、びーちゃん、なんでよりによってこんな足元に・・・。
気をつけながらの蛹のびーちゃんとの共同生活。
そんな感じで何となく時は流れ気が付けばびーちゃん保護から2か月以上が経っていました。
危ういびーちゃんの存在も何となく慣れてきて毎日は気にしないほどになっていた今日この頃。
そして先週金曜日、この日は私の帰りが遅くなってしまい相方さんの方が先に帰ってきていました。
そしてびーちゃんが羽化していると指をさす相方さん。
えっつ!!!!!
見るとカーテンの足元の床を綺麗なキアゲハがふらふらと歩いている。
まじっつ!!!???
外は寒くなってきたけれど部屋は暖房がずっとついていたので、もういいかしらと出てきてしまったらしい。
実はこの前日相方さんはびーちゃんのいるすぐ横のコンセントを使おうとした時にびくっと動いたのを見たのだそう。
「でも気のせいかと思った」
嬉しそうに話す相方さん。
そう、私もびーちゃんの存在を何となく忘れかけていたこの前日、ふとびーちゃん羽化しちゃったら外もう枯れ葉だしどうしよう、って一瞬思っていたのです。
二人で羽化したびーちゃんを鳥かごに保護して観察。
綺麗しか二人とも言葉が出てこない。
なぜあの緑色の姿からこんな神秘的な姿に変身するのか。
なぜあんなに小さな蛹のカラの中にこんなに大きな羽が収まっているのか、不思議でしょうがない。
とりあえず蜂蜜水で湿らせたティッシュをお皿に置いてみたけれど吸う様子はなく。
籠に少し振動があるとびくっとしてあわあわと籠中動き回る姿は幼虫の時と変わらずびびりのようです。
明るいと動き回って体力を消耗してしまうので、そのまま2階の北側の部屋へ移動して落ち着くように暗くしてあげました。
蝶の寿命は1週間くらいだそうなので、この籠の中でびーちゃんが死んでしまうのを見るのは嫌だよね、ということでこうなったら一刻も早くびーちゃんを外へ逃がしてあげたい。
でもここら辺はもう枯草ばかりで餌になるようなものがない。
考えた挙句、日曜日がたまたまお休みだった私はアパートよりも標高の低い甲府の方まで行くことにしました。
幸いここのところ季節外れの暖かい日が続いているのでびーちゃんも頑張れるはず。
そして昨日のお休み、びーちゃんの入った鳥かごを車に積んで高速に乗って花のありそうな公園を目指しました。
車を止めた公園にはたんぽぽやへび苺の花もまだ咲いていて、寒桜も咲いていました。
そして何よりミツバチやシジミチョウなんかがまだ飛んでいたんです。
びーちゃんは元気に籠の中でぱたぱたぱたぱた。
蓋を開けると「あれっ?」と思ったように一瞬今までと違う動きでふわっと飛んで、その後すぐに元気よく勢いよくあっという間に遠くまで飛んでいきました。
力強い姿に一安心。
ああ良かった。
びーちゃん、頑張って餌探してね。
元気でね。
一緒に放したかったであろう相方さんには動画を送って報告。
何か責任感のようなものからやっと解放されるのを感じながら、2か月間右往左往して一緒だったびびりのびーちゃんが旅立ってしまった少しの寂しさを抱えながら帰路につきました。